モートン(モルトン)病のエントリーをした時には、何気なく書いたつもりだったのですがいつのまにか私のエントリーのなかでこの記事が一番アクセス数もコメント数も多くなりました。
この記事のアクセスが多くなってからでしょうか、それから3人の患者さんが
わざわざ今勤務している北海道帯広市(整形外科メインの病院である開西病院)に私を訊ねてきてくれました
一人はたまたま北海道内から、もう一人は三重から、そして一番最近は神戸から。
受付や外来スタッフも「そんな遠くから」と驚いていて
私のほうも、わざわざこんなところまで、ととても恐縮してしまうのですが
きっとそれくらい、困っておられるということなんだと思います。
今日はそのうちの一人の方について経過をブログにのせることに了解いただいたので書いておきます。
花子さん、了解していただいてありがとうございます、
追々、他の方のことも了解がとれればこちらに追記したいと思います。
この患者さん(仮名)花子さん(60歳、女性)とほとんどはemailでやりとりしていましたので長文になります。一部修正/削除してあります。
花子さん:
先日は、お電話にて失礼致しました。突然のお電話にもかかわらず親切にご対応いただきましてありがとう御座いました。さて私、現在60歳の主婦で足の痛みと先行きの不安とで毎日苦しんでおります。今までの経過と現在の状況をお知らせします。
H17年12月ごろ、右足薬指がしびれる様になったのでA病院へ行きました。先生は「靴が悪いのでしょう」という事で、特に処置も無くそのままの状態ですごしました。
H19年3月に右足薬指に激痛があり、足を傾けてしか歩けなくなり、またその病院へ行きました。レントゲンは異常無しとのことで、MRIで1cm弱の神経腫があり「モートン病」だと言われました。先のとがった靴などはいたことも殆ど有りません。ただ、プールで歩行するのにバックで歩いたりはしました。 モートン病は「治らない」と先生に言われ、「今までどおりの日常生活をしてください」、「靴底はソフトなものを」、「手術は考えないほうが良い、痛みと痺れがあるから」、「体重は増やさない様に」といわれました。それから約一ヶ月、だんだんと足の裏(薬指の下)が腫れだし、歩くと指のつけ根と薬指が痛みます。
約三週間前から左足も同じところが痺れだし、両方の足に神経腫ができたのかと不安で一杯です。また、最近は左足の人指し指もしびれだしました。
これから先どうなるのか、歩けなくなるのか、どんどん進行し痛みもひどくなるのかと不安です。日常生活を、どのようにすごしたら良いのか分らず、なるべく歩いた方が良いのか、あまり歩かないほうが良いのかも分らず、行き詰まっております。
インソールも良いと聞いた所で作ってもらったのですが痛くて使えません。その店の人が、「15分くらいは毎日インソール入りの靴で歩いてください」と言うのですが、痛いのを我慢して無理をしてでも歩いたほうがよいのか、それも分らずどうする事も出来ません。先のことを考えると食事ものどを通らず、悶々とした日々を送っています。
どのような靴がよいのか、どのようなスリッパが良いのか、ソックスはどのようなのが良いのか、も迷っています。
私(本名=圓尾):
ご丁寧にメールをありがとうございます
MRIで神経腫がうつっていたのに、それ以上の治療をしてくれないのはおつらいですね
お話を伺う限りでは、手術もご検討されたほうがいいように思います。
帯広までいらしていただけるのならもちろん若輩ではありますが診察させていただきたいと思うのです、が、
私のもっている教科書を見ていたら奈良県立医科大学整形外科磯本慎二先生、田中康仁先生というお二人の先生がモートン病についての手術療法について書かれているのを見つけましたので帯広まで来られるのが大変でしたら奈良医大に行かれるのはいかがかと思っています
奈良県立医科大学には股関節の河原先生という先生が友達ですので、もうしばらくお待ちいただければその先生にメールでも送ってみますがいかがでしょうか?
どちらにしても撮ってもらったMRIやレントゲンはその先生からお借りしておいてくださいね。
花子さん:
早速お返事いただきまして有難うございました。ご親身な対応に、只々感謝しています。
圓尾先生のお返事を読ませていただき、近くの先生をご紹介していただけるのでしたら大変うれしく思います。しかしその前に、ぜひとも一度圓尾先生に診ていただきお話をお聞きしたく思います。すでにA病院より、MRIとレントゲンをお借りしてきてあります。そちらで診察していただくのは月火水金曜日の診察時間にFREEで外来受付すれば診察していただけますか? 付き添いの主人の仕事の都合もありますが成るべく早くお伺いしたい
と思います。 よろしくお願いいたします。
(私の診察日は月火水金ですが、診察時間外でもご都合に合わせて診察することをお伝えしました)
そして花子さん、わざわざ遠いところからいらしたのですが
もってきていただいたMRIは右足の3/4足趾間に冠状断できれいにくるりとしたT1-low~medium, T2-low, Gd-enhance positiveの大きなneuromaが写っていました。また、その他、右母趾の足底に炎症による腫れが大きく写っていました。
診察すると痛みと放散痛が右足の3/4足趾間にあり、典型的なモートン神経腫でしたが、同じような痛みが反対側の左にありました。また右母趾の足底の腫れは一時期ひどかったようですがだんだん落ち着いて来たようで、レントゲンで種子骨の疲労骨折を起こしたのだろうと判断。足を横から(おやゆびとこゆびから)つかんでごりごりっと神経を挟むようにする手技でも痛みの増強はありませんでした。
花子さんからの質問
1, 両方の足に神経腫ができたのかと不安 →確かに、ひとつでなくふたつ神経腫が出来た患者さんをみたことがあったので、その可能性はあるだろう
2, なるべく歩いた方が良いのか、あまり歩かないほうが良いのかも分からない→歩く事は基本なので、柔らかい靴、きちんと足にあったインソールを使っていれば歩くのは構わないだろうと思う。神経腫があるので、歩いて痛みが強いのであれば「歩かないでおく」ことを選択するよりも「手術的に摘出する」ほうをえらんだほうがいいと思う
3, どのような靴がよいのか、どのようなスリッパが良いのか、ソックスはどのようなのが良いのか→ハイヒールでないもの、先の狭くなっていないもの、インソールのない平な靴は避けた方がいいでしょうが、それ以上のことは何とも...(ここのブログにコメント下さったみなさんはいろいろ工夫されているようですよね)
などなどいろいろお話して、結局これだけはっきりした神経腫を見てしまうと、外科医としてはとりたくなるけれども、足の手術というのはひとつメスをいれれば、その傷が痛かったり、他の場所とのバランスが崩れて他の場所が痛くなってきたりすることがあるので、慎重になったほうがいいでしょう。 できている神経腫はほんものの悪い腫瘍ではなく、偽腫瘍なのでそのままにしていて悪いものではないし、「ものすごく」痛かったらとればいいと思います。結局、神経ごと取る手術になるので、取ってしまったあとはシビレは残る場合もある。手術をするとなると、足なので入院期間も長くなる事があるし、できればこちらよりも近い奈良医大のほうに紹介するけれど、とお話してその日は花子さんお帰りになりました。
花子さん:
昨日はお忙しいところを御診察いただきまして有難うございました。突然の飛び入りにも拘わらず長時間御相談にも応じていただきまして本当に感謝いたしております。先生にはご迷惑をおかけしました事大変申し訳なく思っております。
ご丁寧な説明でこの病気について良く理解できました。 手術等は一度奈良医大の先生に診ていただいて決めたいと思っています。いろいろお手数をおかけする事となり、大変申し訳無くおもいます。北海道は遠い地ですが思い切ってお伺いして良かったと思っております。帯広というところは初めて出したが、空気もよく、広々として大変好きになって帰ってきました。本当に、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。まずはお礼まで
私:
奈良県立医大の股関節と下肢専門医の河原郁生先生(イギリスでしばらく一緒に働いていました)からお返事をもらいました
奈良医大の田中康仁先生宛に今の先生から紹介状を簡単に書いてもらって、金曜日に受診するとよさそうですね。もし、今の先生に紹介状をお願いするのが難しいようでしたら、私が書いてお送りいたしますので
どうぞご相談ください。
症状や治療などの今までの歴史を(現病歴といいます)簡単にご自分でも書き出されておいたら分かりやすいかもしれません
しばらくして...
花子さん:
今日、大学病院へ行き、田中先生に診ていただきました。
河原先生には手術中とのことでお会いできず、お礼を申し上げることが出来ませんでした。看護師さんにお礼をお伝えしてくださいとお願いしてまいりました。
さて、足ですが 足に注射をしていただき、それで一週間様子を見、手術をしたような状態を見るとのことでした。こぶは最大級?(5ミリぐらい)とのことでした。加重のレントゲンを撮りましたが余り足の骨が開かないなあとおっしゃって見えました。後は、リュウマチと尿の検査をしていただいています。
また来週来てくださいとのことでした。結構早い時間に診ていただくことが出来ました。有難うございました。
経過等はご迷惑でしょうが、都度報告させていただきます。
またしばらくして...
花子さん:
ご無沙汰いたしております。帯広に伺って早1ヶ月近くになりました。
一時はどうしようかと本当に不安でしたが、やっと最近精神的にも落ち着いてきました。圓尾先生のお陰と感謝しております。
さて本題ですが、県立奈良医大の田中先生は、痛みと、普段の生活の支障との度合いで手術をするしないを決めましょうとおっしゃいました。今のところ日常生活はなんとかできるので手術をしていただくのも、もう少し先にしようかなと思っております。
BLOGの件も前にもお願いしましたが、匿名にしていただければ載せていただいて結構です。私も先生のBLOGで助かりましたので他の方の参考になればうれしく思います。河原先生にもよろしくお伝え下さい。
先生のご活躍を心よりお祈りいたしております。
とっても「立派」なモートン神経腫をお持ちだった花子さんですが、手術は時期をみて、と決断されたようです。それは手術することが「治す」ことではなく「痛みをなんとかする」手術であることを考えると、確かに痛みの具合で手術をするかどうかを決めるのは正解だと思います。
花子さん、帯広まで来てくださってありがとうございました。
またとっても素敵なメールをいつも送ってくださって、どうしても、同じような悩みを抱えてるみなさんにもお伝えしたくて公開させていただきました。