ある時点でウイルスに感染していることが判明している人を対象にして、その後の経過を追跡調査した報告があります。(Kenny-Walsh Elizabeth. Clinical outcomes after hepatitis C infection from contaminated anti-D immune globulin. N Engl J Med 340 1228, 1999)
米軍の新兵時に採血し保存されていた血液を分析し、HCV抗体陽性でありC型肝炎に感染していたと考えられる人17名を対象に、45年後にどうなっていたかを追跡調査した研究があります。45年の間に肝臓病を患っていたのは17名中2名の12%であり、45年後の時点で17名中7名が死亡していましたが、肝臓病が原因で死亡した人は17名中1人(6%)とごくわずかでした。
また、C型肝炎ウイルスにより汚染していた血液製剤の使用により、ある時期に感染したと考えられる患者を対象に行った調査があります。(Seef LB, Miller RN, Rabkin CS et al. 45-year follow-up of hepatitis C virus infection in healthy young adults. Ann Intern Med 2000; 132, 105)
HCV抗体陽性であった感染者704人中314人は、感染後17年の調査の時点でウイルスは消失しており、消失していない人を対象に詳しく調べた結果でも、17年後に肝硬変になっていたのはHCVRNA陽性の390人中7人(2%)に過ぎないことが明らかにされています。
上の二つの研究は対象者が若いということ、海外での調査であるという点に注意が必要ではありますが、このような調査の結果は肝臓病患者の耳にはほとんど届いていません。肝臓病教室に参加する患者さんにアンケート調査をしても、患者さんは肝臓病の進展を調査の実際よりも、もっと悲観的にとらえていることが明らかでした。ほとんどの人は感染すれば大部分が慢性肝炎になる、そして肝硬変になると考えているのです。
その原因の一つは、わが国における調査では、肝硬変になった人を過去にさかのぼって後ろ向きに調査されたものが殆どであり、その結果が色々なメディアを通じて広報されているためと考えられます。感染した人がどうなるかの調査は、技術的に難しい問題が多く、中々実施は困難です。
もう一つの原因として医療者側の問題があります。病気の悪い予後を知らせることにより、患者をおどして治療に従わせようとする意識が根底にあるのではないでしょうか。
本来はそのような意図のない、中立な情報が患者さんの側に伝わることが望ましいのです。そのような役割をMELITは考えていきたいと思います。
加藤眞三、肝臓病患者生活指導テキスト(南江堂)より改変