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2005年08月23日 治療の選択について

外来で診ている慢性の肝臓病の患者さんの多くは高齢者であり、日本のお任せ文化に親しんできた人達です。このような人に対して、いきなり複数の治療法の可能性を示し、その中から選択をと迫っても、戸惑われることも少なくありません。

 しかも、現実の問題として、患者さんに提供すべき情報、治療法を選択するための根拠となる情報が、施設ごとの成績として準備できているわけではありません。論文に書かれている治療法の成績は、報告をした施設のものであり、別の施設での治療の成績とは異なっていても当然です。例えば、肝臓がんの治療であれば、ラジオ波が得意でどのような肝がんでもラジオ波で治療できるという施設もあれば、腹腔鏡を使った治療を得意とし身体への低い負担でかつ良好な成績をあげている施設もあります。

 患者数の多い病気なら、まだある程度の成績は示すことができても、数の少ないまれな病気になると、各施設が科学的評価に耐えるだけの十分な症例数やデータをもつことはできません。

また、同じ肝がんであっても、肝がんの治療成績をしめすためには、肝炎ウイルス感染の有無、合併する肝硬変の進行度や糖尿病の状態、腫瘍の大きさ・数・部位・血流の状態、超音波での見え方、針が刺しやすい部位か否か、血管との位置関係など、いくつもの場合分けが必要となります。

ところが、そのような場合分けをし続けると、それぞれのグループの症例数は限りなく小さくなります。その結果として、どの治療法が優れているかを統計的な手法により科学的に証拠をもって示すことはできなくなります。しかも、それぞれの因子は、必ずしも独立したものではなく、お互いに影響しあうこともあります。

さらに、PEIT(エタノール局注療法)やRF(ラジオ波凝固療法)などの治療では、施行する医師の腕や意気込みによっても成績は異なります。そして、合併症がおきてしまったときのリカバリーの技術も実は大変大事なのですが、その技術は施設によって差が相当ありそうです。ある施設でかなり積極的に治療が行えるのも、合併症がおきたときにそれを回復させるだけの技術がバックにあってのことなのです。

したがって、全国的に多数の施設から症例を集めて集計を行い、数さえ増やして統計処理すればよいという、単純な問題ではありません。

B型慢性肝炎に対するステロイドやラミブジンを使った治療でも同様のことが言えます。影響力のあるガイドラインに、ある治療法が推奨されていても、それを作成した医師のいる施設がその技術に長けているだけで、全国的には、ほとんど採用されていない治療法である場合もあります。この辺の事情は、中々患者さんだけの情報の収集では解りにくいところではないかと思います。

MELITには多くの肝臓の専門医が共鳴し、参加の意志をしめしてくれていますので、肝臓病の患者さんからの質問に対してそれぞれの医師からの意見が聞けるようなシステムを構築できればよいなと考えています。今後の当サイトの発展に期待をしてください。特に肝臓病の患者さんが聞きたいような質問を、ここが聞ききたい肝臓病に寄せてください。それに対して多数の医師が回答できるようにしたいと思います。

このようなシステムの構築は、かえって患者さんを惑わせることになるのではないかとの危惧もあるかもしれません。しかし、色々な情報を取り入れて、それを土台に患者さんが自分で判断していくことが「医師憲章」に表されている理念に沿うものだろうと考えています。

投稿者 katos : 2005年08月23日 20:08
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コメント

 おはようございます。
 肝疾患とは話がずれてしまうのですが、初めMELITの患者さんは学ぼうとされる姿勢が半端でなくて、ごく普通の人には敷居が高くなるのではないかと心配でした。
 私事ですが、昨日妹の子宮摘出の説明を受けたとき、リンパ切除の話になると妹はもちろん普通の人には分からないことばかりの言葉が出てきて、これをひとつひとつ説明すると数時間かかると感じました。
 そのとき、患者側もお任せだけの時代では無くなったと感じ、ふとMELITの患者さんたちのことが浮かびました。
 普通の人でもあらゆる機会にどんどん疑問点を尋ね、こうしたMELITの記事を読むと最低病気に必要な知識も身につくのではないかと思いました。

投稿者 行灯さん : 2005年08月24日 05:45

たくさんの専門医の方の回答、面白い試みですね
専門医といっても得て不得手があるでしょうからどんな方のどんな回答がつくのか興味津々
と始まる前からプレッシャーかけても・・・
病院に行かず、私ならこうするという先生方のコメントをNETで見られるなんて何て贅沢なことでしょう
でも個別相談になってしまう恐れもありますね
患者側の良識も問われているんですね
どんな先生がコメントしてくれるのか楽しみです

投稿者 sasadonさん : 2005年08月24日 22:55

行灯さん。 これから一般の人にいかに医学知識を伝えるか、普及させるかは、医療の分野での大事な課題になるのだと思います。医学には難しいことも一杯あるけれども、実は患者さんが知らなければならない知識は、それ程難しいものではないといわれ始めています。 本当に必要な知識をまとめることが求められているのだと思います。

Sasadonさん。顔も見ずには個別相談はできないので、あくまでも一般論としての専門医の見方を披露できればよいのではないかと思います。 

投稿者 加藤眞三さん : 2005年08月26日 17:28



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詳しくは「ご利用上の注意」をご覧ください。

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