(原理)
経動脈的塞栓療法 (TAE)は、大腿動脈からカテーテルを挿入し大動脈を経て腫瘍を栄養している肝動脈まで進め、そこから造影剤を用いて血管造影を行い観察すると同時に、ゼラチンスポンジやリピオドールといった塞栓物質を抗がん剤にまぜて注入し、腫瘍を壊死させます。動脈からの血流は止まるのですが、門脈からの血流で正常の肝細胞は生きていることができるのです。それに対して、癌の場所では動脈の血流が豊富で圧が高く、門脈からは血流がいきません。そのような部位で動脈がつめられると、動脈血流がなくなり、がん細胞が酸欠状態になるのです。
肝機能の低下している症例では、塞栓術は肝臓への負担も大きいため、抗がん剤の動脈からの注入のみをおこなう動脈内抗がん剤注入療法(TAI)を行うことがあります。特に、門脈からの血流がないような場合には、つめることができないため、動注のみとなります。
(リザバー動注)
さて、そのような治療法では効果がどうしても弱いために、それを何回も繰り返すことが試みられます。そして、どうせ繰り返すのなら肝動脈内にカテーテルを留置して、カテーテルにつないだリザバーと呼ばれる器具を皮膚の下に埋めて、そこから注入しようとするのが、リザバー動注療法です。ですから、原理的には一回あたりの副作用を少なくし、何回も注入することができます。それにインターフェロンを組み合わせると効果が高いと試みられる場合があります。
(副作用、合併症)
動脈を穿刺するため、術後に安静が必要です。抗がん剤に対する反応として、発熱、腹痛や嘔気などがみられます。
TAEもTAIもカテーテルを動脈内に進めるので、血管の内壁を傷つけることがあり、そこの血流がなくなったり、細くなったりすることがあります。また、胆のう炎、膵炎、十二指腸潰瘍を起こしたりすることがあります。肝臓の機能の低下が強いと肝不全となり死にいたる例もあるのです。
(動脈内治療の効果)
TAE
動脈内に塞栓物質をいれて化学療法する塞栓療法(TAE)は、RF(ラジオ波)やPEIT(エタノール局注)などの局所的な治療が困難な場合に行われ、1990年代にはその効果も証明されていませんでした。ようやく、2002年にTAEに効果があることが一流誌に報告され、証明されました。それまでは、TAEには治療の根拠がないなどと非難されることもありましたが、その当時でも確かにTAEが効果的な症例もあったため続けられてきたことが、やっと証明されたのです。ですから、科学的には治療効果の証拠がないということと、その治療が無効であることとは異なるのです。
TAI
動注化学療法は、さらに塞栓療法も困難な症例を対象に行われるため、治療成績は決して良いわけではありませんが、リピオドールとの併用により、よりよい効果が報告されています。
一般に動注リザバー療法が使われるのは、主に腸管から肝臓に血流をながす門脈の枝が塞栓で閉鎖した時ですが、それは門脈がつまっていると動脈も塞栓するとダメージがおおきすぎるからです。他に治療法がないために試みられてきましたが、門脈の塞栓が消えたり腫瘍が小さく例などが3割から5割程度あります。この場合は、5FUとシスプラチンが使われている場合が多いです。元々治療困難例に行われているため平均生存月数では7.0−8.0ヶ月と著明に長いわけではありません。また、インターフェロンを5FU(+シスプラチン)と併用する動注化学療法も検討されています。本年の肝臓病学会の金沢大学からの報告では、奏効率は25%と37.5%(後者はシスプラチン併用)ですが、50%の人が生存している期間は279日と318日(後者はシスプラチン併用)であり、シスプラチン併用で血小板の減少の副作用が多い(30%対42%)ことが報告されています。
肝臓がんの手術をした後に追加治療として、リザバーよりドキソルビシンとリピオドールの投与が67の症例で試みられ、3年、5年、7年後の生存率がコントロールに比べて、それぞれ79% vs 69%、55% vs 32%, 40% vs 26%と良かったことが広島大外科チームより報告されています。
(リザバー療法の合併症)
このようにリザバーでの治療は期待も多いのですが、動脈にカテーテルを留置しそこから抗がん剤を投与することから、動脈血管が傷ついて血管が細くなったり血流がなくなるなどのことがあります。年齢も高齢者では血管が傷つき易いので良い結果をえるのは難しくなります。また、リザバーからの管の中で血液が固まってしまう場合も多いのです。血管内に管を留置するため、感染もおきやすくなります。
(結論)
いづれにしても、まだ世界的に標準的な治療とは言えず、施設の間でその効果や副作用・合併症の出方もかなり異なります。このような治療法の比較は、施設が異なるとどの方法を選択するのがよいかも異なってくるのです。それは療法の技術の差であったり、その後に合併症が起きた時の対処の仕方などの経験が差をもたらす場合もあります。また、年齢や肝硬変の状態、肝がんの状態によっても、治療成績は異なります。それぞれの施設で十分に説明を受けてから行うことが何よりも大切です。