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「最近、足がだるくてだるくて。
主人の介護をしないといけないんですが、思うように足が動かないんです。
床に座るのではなく、椅子に座るようになったのがいけないんでしょうかねぇ。」
往診でNさんを診察した後、Nさんの奥さんが困ったように言われました。
「むかしの人は、わたしの知っている明治以前の人たちはもっと足がしっかりとしていたんですが…。」
Nさんの奥さんは86歳。
Nさんは91歳。
立派に老老介護をされています。
往診でその人が主(あるじ)として生活されている姿を見させていただくのは、
医療者としての楽しみの一つです。
それにしても、
むかしの人、が、明治の人になるんですから、
年季が入っています。
いつまでも、ご夫婦そろって、お元気でいられますように
第3診察室 執筆中 です。 こちらも見てくださいね。
癌などの悪性疾患をはじめとする、
終末期における苦痛を和らげるケアを、
緩和ケア、といいます。
緩和ケアを受けられる患者さんは、
残念ながら、完全に病気がなくなるという状態になることはありません。
それだけに、緩和ケアは、
その患者さんにとって残りの一生を通じて必要なケアとなります。
一時的なものなら、その期間だけ我慢すればいいこともあります。
でも、緩和ケアは、一時的ではなく、命ある限り、ずっと続くものです。
患者さんが、残りの一生を、
からだ も こころ も すこしでも安らいだ状態で過ごすことができる、
そんなケアを提供する。
そして、残りの一生の間、ケアを提供し続ける。
これが、緩和ケアに携わる医療者に必要なことだと思います。
緩和ケアを受けられる患者さんが、
尊厳を持って残りの一生を過ごせますように。
そして、ケアの提供という点を除くと、
患者さんと医療者がおなじ人間として
対等の立場でありますように。
自分がその立場になったときに受けたい医療、ケアを
提供していきたいです。
空いた、心のすきま。
朝に、昼に、夜に、
一番気になって診察に行っていたベッドも、
ぽっかりと空いています。
患者さんががんばれば、
医療者もがんばれば、がんばるほど、
ぽっかりと空いたすきまは、
大きくなります。
どうしたら、救えたんだろう。
やれることは、すべて、した。
それでも、救えなかった命に、
自分の力不足を感じます。
ぽっかりと空いた心のすきま。
満たしてくれるのは、
それでも感謝してくださるご家族の
「ありがとうございました。」
という言葉
です。
ご家族の心のすきまも、
大きいでしょうに。