男の子と女の子を両方育ててみると、その違いの大きさには驚かされます。骨子はよく学校のことを話してくれる。だから彼女の中学の様子は手にとるように分かります。しかし太郎は、まったく学校の話を家ではしません。「聞きたいことがあったら質問してくれ」。とにかくあまりしゃべらない。パントマイムのように首をたてや横にふってみせるだけ。
H君とM君の悲報に接した後の、二人の反応も対照的でした。吹奏楽の部活から帰るとなり、骨子は号泣します。ある意味でこの子の反応は分かりやすい。太郎はその日は祝日で練習もなく家にいて、電話連絡でH君の死を知りました。格別変わった様子はみせません。口笛をふきながらゲームをやっていた。感情を表に出すことが苦手のようです。
H君に太郎はいろいろな思い出があります。吹奏楽の男の子は少ない。しかも同じトランペットパートです。宇都宮や水戸に遠征した日の夜は、男の子同士同じ部屋で、楽しい時を過ごしました。同じパートのH君の学年には、しっかりしたコワイ感じの女子の先輩が複数いました。なごみ系のH君のキャラは、太郎にとって救いになっていたはずです。
あまりしゃべらない太郎ですが、会話のはしばしに「H君は」ということばが出てきます。H君の一家は昨年の秋に引越しをしました。「家を変わらなかったら死なずにすんだかなあ」とぽつりといったことがあります。コンビニに買い物にいった時、太郎は森永のチョコボールを指差します。「これH君が好きだった」。太郎の頬に涙がつたっています。
火事から数日後。太郎が吹奏楽の男の子たちと火事の現場に行きました。花と楽譜とチョコボールをたむけます。チョコボールの箱に太郎は「いままでありがとう」と書きました。お世話になった先輩への偽らざる気持ちでしょう。子どもたちはその後、吹奏楽の練習にいきました。練習から帰った後の太郎の顔は蒼白でした。子どもには、あまりにも過酷な経験だったのでしょう。
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