99年12月8日。入院87日目で退院することができました。その後、GVHD(免疫障害)が肝臓にきて、GPTが500を超えることとなり、再入院かという騒ぎもありました。しかし、免疫抑制剤を増量することで嘘のようにおさまり、比較的平穏な日々が続きます。4月までの休職中は、仕事をせず家にいるわけですから、暇な事この上もない。
だから暖かい日には、桜と太郎にを連れて外に出ていました。ところが私は異様ないでたちです。感染予防のために大きなマスクをして、頭には毛糸の帽子をかぶっています。化学療法でスキンヘッドになってしまったので、それを隠すためです。小学校1年生の桜が、このスキンヘッドを面白がります。団地のなかの広場で遊んでいる小さな子どもを呼んで来ては「びんちゃん(私のこと)、帽子を取って」といいます。私が帽子を取ると、突然あらわれた禿げ頭にびっくりして、子どもたちは叫び声を上げて逃げ惑います。
その姿をみて、桜だけでなく、大人げのないことに、私もまた少なからず喜んでいました。ところが・・・。
ある日の夕方、桜の小学校の連絡網が回ってきました。「あやしい中年男が、禿げ頭をみせて子どもたちを脅しつけている。警戒を厳重にするように」とのものでした。妻が周りのお母さん方に事情を話して、「厳戒体制」は解かれましたが、さすがに私は気落ちしました。「あやしい中年男」とは・・・。すると桜が、「これからは、外にでる時はこれを首にかけてね」と言って自分の作ったプラカードを私に渡しました。それがいまも手元にあるので、原文をそのままのせます。
「わたしカレーライスは、けしてあやしいものではありません。ただの人げんです。しゃかいがくしゃです。サラリーマンかしたしゃかいがくしゃです。けして、あやしいものではありません」。退院した直後、熊本の大学に勤める私の友人が見舞いに来てくれたことがあります。その時、彼が「雑用に追われて研究ができない」とこぼすので、「まあ、ぼくらは宮仕えで、サラリーマンみたいなものだから、雑用は甘受しないといけないのじゃないか」と言った覚えはあります。それを桜は耳にしたのでしょう。 でも「サラリーマン化」なんて、言った覚えはないんだけどなあ・・・。
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