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患者の権利に関するリスボン宣言
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世界医師会 患者の権利に関するリスボン宣言
序文

近年、医師、患者と社会の関係は、大きな変化を遂げてきた。

医師は常に良心に従って行動し、そして常に患者に最大の関心を持つべきである一方で、患者の自律と正義を保証するために、それと同じだけの努力が払われなければならない。

以下の宣言は、医療職が支持・促進する患者の権利に関する基本的原則を示したものである。
ヘルスケアの提供に関わる医師やその他の医療関係者、医療組織は、全て同様にこの権利を認識し遵守する責任がある。

立法や行政、その他の機関・組織が患者の権利を否定した場合は、いついかなるときも、医師は、患者にこの権利を保障するため、もしくは返還するために、適切な手段を講じなければならない。

非治療的な生物医学研究を含めて、人体実験に関する生物医学的研究において、被験者には通常の治療状況にある患者と同等の権利と配慮が与えられている。

原則

1. 良質の医療を受ける権利

a.  すべての人が、適切な医療を差別されることなく受ける権利を有する。
b.  すべての患者は、外部からの妨害を受けずに自由に臨床・倫理的判断を行えることを認識している医師からケアを受ける権利を有する。
c.  患者は、常に患者にとっての最善の利益に即して治療されなければならない。
行われる治療は、一般的に容認されている医療原則に即していなければならない。
d.  質の保証は常にヘルスケアの一部である。特に医師は、医療サービスの質を守る者として責任ある立場にあることを受け入れなければならない。
e.  資源の限られた特定の治療を必要とする患者の間で選定が行われる場合、そのようなすべての患者は、公正な選定過程を経る権利を有する。

選定は医療的基準に基づき、差別なく行われなければならない。

f.  患者は、継続的なヘルスケアを受ける権利を有する。医師は、患者を治療するにあたり、医学的に必要なケアの連携をするため、他の医療提供者と協働する義務がある。
医師は、医学的に治療の継続が必要である限りは、それに代わる治療の機会が得られるような適切な支援と十分な機会を与えないで、治療の中断をしてはならない。

2. 選択の自由に関する権利

a.  患者は、民営・公営に関わらず、自由に医師や病院、医療サービス機関を選択、変更する権利がある。
b.  患者は、いずれの段階においても、他の医師の意見を求める権利がある。

3. 自己決定に関する権利

a.  患者は、自分自身に関して意思決定を自由にするための、自己決定権を有する。

医師は、患者の決定がもたらす結果について伝える。

b.  精神的に判断能力のある成人の患者は、診断的処置や治療に関して、同意するまたは同意を保留する権利がある。
患者は、意思決定に必要な情報を得る権利を有する。
患者は、検査や治療の目的が何か、結果が何を示すのか、そして同意を保留することによりどのような結果が予測されるのか、明確に理解しなければならない。
c.  患者は、医学研究や医学教育に参加することを拒否する権利を有する。

4. 意識のない患者

a.  もし患者に意識がないか意思を示すことが不可能な場合、法的な問題に関しては、可能であるかぎり、法定代理人から、インフォームド・コンセント(説明を受けた上での同意)を得なければならない。
b.  法定代理人がおらず、しかし医療の介入が緊急に必要とされるときには、その状況下でのある治療法による介入への同意を拒否する、患者の事前における強い意思表示や信念に基づいていることが明らかであり疑いがない場合を除いては、患者の同意があるものと仮定する。
c.  しかしながら、医師は常に、自殺未遂によって意識を失っている患者の命を救うために努力をしなければならない。

5. 法的に能力を持たない患者

a.  もし患者が未成年か法的に能力を持っていない場合、法的問題に関しては、法定代理人による同意が要求される。

しかしながら、その能力が許す可能な範囲まで、患者自身が意思決定に含まれなければならない。

b.  もし法的に能力のない患者が合理的な意思決定をできるのならば、その決定は尊重されるべきであり、患者は、法定代理人への情報開示を禁じる権利も有する。
c.  もし患者の法定代理人や、患者によって委任を受けている者が、医師の立場からみて患者の最善の利益となる治療を禁じる時には、医師は、関係する法律や規定によって、その意思決定に異議を唱えるべきである。

緊急の場合には、医師は患者の最善の利益のために行動する。

6. 患者の意思に反する処置

患者の意思に反する診断上の処置や治療は、特別に法的に許容され医学的倫理原則に則っている場合に、例外的な事例においてのみ行うことができる。

7. 情報についての権利

a.  患者は、いかなる医療記録であろうと、そこに記載された自分自身に関する情報を受ける権利を有し、また、症状に関する医学的事実を含む健康状態について、十分に知らされる権利を有する。

しかしながら、患者の医療記録に含まれる第三者に関する機密情報は、第三者の同意なく患者に与えてはならない。

b.  例外として、患者の生命や健康に著しい危険を及ぼす恐れがあると信じるに充分な理由がある場合には、患者への情報提供が保留されることもある。
c.  情報は、地域の文化に適した方法で、また、患者が理解できるような方法で与えられなければならない。
d.  患者は、他者の生命を守るために必要な場合を除いて、患者自身の明確な要求に基づいて、情報を知らされない権利を有する。
e.  患者は、必要ならば、自分に代わって情報を知らされる人を選ぶ権利がある。

8. 秘密保持に関する権利

a.  患者の健康状態、症状、診断、予後および診断に関する身元の特定可能な情報と、その他個人的事柄に関する全ての情報は、たとえ患者が死亡した後であっても機密事項として扱われなければならない。

例外的に、患者の子孫は、健康上のリスクを知るために、患者の情報を入手する権利を得ることもある。

b.  患者が明確な同意を示しているか、法律で明確に規定されている場合しか、機密情報は開示されるべきでない。
患者が明確な同意を示していない場合には、厳格に「知る必要性の度合い」に基づいてのみ、他のヘルスケア提供者に開示される。
c.  患者を特定できるすべてのデータは保護されなければならない。それらのデータは適切な方法で保管されなければならない。身元が特定できる情報が取り出せる身体資料も同様に保護されなければならない。

9. 健康教育に関する権利

すべての人は、自分の健康と利用可能な医療サービスについて、インフォームドチョイス(説明を受けた上での選択)の助けとなる健康教育を受ける権利を有する。

健康教育は、健康的なライフスタイルや、予防方法、そして病気の早期発見に関する情報を含むものであるべきである。

健康に関する自分自身の義務は、強調されるべきである。

医師は、教育的活動に積極的に関わる義務がある。

10. 尊厳に関する権利

a.  患者の文化や価値観が尊重されると同じように、プライバシーに関する患者の尊厳と権利は、医療ケアと教育の場で、常に尊重されるものである。
b.  患者は、現在の医学的知識に添って、痛みや苦痛を除去される権利を有する。
c.  患者は、人間的な終末期ケアを受ける権利を有し、尊厳のある安楽な死を迎えるため、利用可能なあらゆる支援を提供される権利を有する。

11. 宗教的支援に関する権利

患者は、信仰する宗教の聖職者からの支援を含めて、スピリチュアルで精神的な癒しを受けたり、それを拒否する権利を有する。

(翻訳 露木久美子  監訳 加藤眞三)
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